アマチュア衛星
「ふじ3号」
運用情報
(社)日本アマチュア無線連盟
 技術研究所

ふじ3号(FO-29)の現状(2007年〜2008年)

 1996年8月に打ち上げられた「ふじ3号」は13年目の運用に入りました。太陽電池の発生電力は経時劣化により若干低下していますが、アナログ系の連続運用には十分な電力を供給し続けています。
 しかし、バッテリーの劣化や搭載機器の不具合などから、昨年の春から運用を制限しなければならないようになりました。
 アマチュア衛星「ふじ3号」の最近の状況について時系列で紹介いたします。

【バッテリーの電力収支による運用制限】

 2006年12月に全日照が終わり、2010年の1月まで3年間食の期間になります。食率は最大で33%を超えます。昨年の春に「ふじ3号」の日陰率は33%を超えました。
 「ふじ3号」のバッテリーは11年間の使用に何とか耐えていますが、経時劣化により容量は著しく低下しています。日陰期間は食率により変わりますが、食の間の電力をまかなう容量はありません。
 衛星の電力制御部(PCU)はバッテリの端子電圧を監視して設定電圧以下になると送信機の電源を自動的にオフにします。また、日照域に入り太陽電池の電力により充電が開始され、規定の電圧まで回復すると送信機を自動的にオンにします。
 この機能に不具合が発生していることはわかっていましたが、原因はトランジスターのhFEの劣化により、リレーをドライブすることができないものと推測していました。

 自動的に送信機がオンにならないため、昨年の8月より運用計画を作成して1日に1〜2回の運用をおこなうこととしました。しかし、1日に1パス以上の運用を継続するとバッテリの電力不足のため送信電力が著しく弱くなる事を確認したため、1日1パスの運用として月曜日は運用休止日とすることとしました(2008年8月4日までの運用予定)。

【電力制御部の不具合解消?】

 前述のとおり、「ふじ3号」の運用のためにコマンドを送信してアナログ系中継器をオンにしていました。

 7月20日も09:57に送信機ONのコマンドを送り中継機を動作させました。
 この日は「関西アマチュア無線フェスティバル」の開催日でもあるため、11:35の2パス目の運用も予定していました。11時半過ぎにコマンドの準備をしていると、聞き覚えのあるCWテレメトリーが受信機から聞こえ始めました。「えっ?」と思いながらテレメトリーをメモしましたが、明らかに「ふじ3号」のものです。

 翌日も、さらにその次の日も元気なCWテレメトリーが聞こえました。日陰時にUVCが動作して一時的に中継機が停止しますが、日照のエリアに入りバッテリーの端子電圧が高くなると自動的に送信機がオンになっているようです。
 不具合が何らかの原因で自然治癒したようです。

 7月20日以降、管制局からは1回もコマンドを送信していませんが、順調に運用を継続しています。

 送信機が自動的にオンにならない原因は、トランジスターのhFEが原因ではなく、リレーに原因があった可能性が高いと現在考えています。また、充電電流を切り替えているリレーにも同様の不具合が発生したと仮定すると、これまでの電力不足も納得できます。

【誘導雷による被害】

 8月30日の夕刻から東京は激しい雷雨に見まわれました。「ふじ3号」の管制局のある豊島区巣鴨も例外ではなく、事務局の向かいのマンションに落雷がありました。管制局も誘導雷の被害に遭い、パソコンやアンテナコントローラー、無線機、ネットワーク機器など8点が被害に遭いました。

【CWテレメトリーに不具合】

 9月中旬に1986年に打ち上げた「ふじ」から今日までテレメトリーの受信で運用管制にご協力をいただいている東海大学(九州)の高山先生(JH6MME)から電話で「テレメトリーデータが異常な値を示している。衛星に問題が発生しているようだ」との連絡がありました。

(CWテレメトリーの解読方法のページを開く)

 さっそく、データを確認してみると温度データが異常な値を示していました。「ふじ3号」のCWテレメトリーは、「HI HI」に後に二桁の16進数で情報が送られてきます。最後の五つのブロックが温度データのフレームです(下記のデータのF7からB7まで)。

2008/9/16
HI HI 22 E2 88 D5 8F 05 05 25 00 24 01 01 82 62 94 94 B0 73 F7 F4 BD BC B7
HI HI 22 E2 88 D5 8F 05 05 25 00 24 01 01 81 44 98 96 F0 8A F7 B4 FD BC B7

 テレメトリーのうち「F7」と「F4」が問題なのです。「F7」を物理値に変換すると「−14℃」となりますが食率や今までの観測値から判断してあり得ない温度です。

 また、1行目のデータで「F4」を示している部分ですが、次のデータでは「B4」となっています。この「F4」は「構体温度約−12℃」の温度データですが、テレメトリーが1循した、わずか1分後には「B4」(約+12℃)を示しており、約−12℃から約+12℃まで温度が変化したことになってしまいます。

 現時点では温度のデータ以外では問題は発生していないようですが、引き続き注意が必要です。「ふじ3号」は13年目の運用に入り、いろいろな不具合が発生していますが、アナログ系中継器は現在のところ問題なく使用できています。

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